2019A 違反要件総論
2019-09-26①、2019-10-01②、2019-10-03③(同日の途中まで)
8k26-89
(講義2回分ある)
違反要件の構造
反競争性(抽象的基準)
市場の概念
市場画定
①の後のリアクション
反競争性(具体的基準)
市場画定と反競争性の総合的理解
正当化理由
②の後のリアクション
因果関係
新幹線飛行機問題
最初に
質問等への回答
ヴァンドゥワラ先生のスライド
違反要件の構造
3つに分類できる
行為要件(を充足する行為)
弊害要件(を充足する弊害)
因果関係(行為と弊害との間の)
行為要件
各論で。
この講義では「ハードコアカルテル」から「企業結合」まで。
弊害要件
基本的には各類型に共通
総論として取り扱う(今回と次回)
しかし各論でも触れる
具体例で何度も上塗り
類型ごとに例外や特殊発展理論がある
因果関係
基本的には各類型に共通
総論として取り扱う(今回と次回)
弊害要件と同様、各論でも触れるかもしれない。
以下の整理
行為要件
総論では触れないが、暗黙の前提になることはある。
企業結合
価格協定
など
弊害要件
市場
反競争性
正当化理由
因果関係
「競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者集団がその意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる状態を形成・維持・強化することをいう」(公取委のガイドラインからの引用)
自分の価格等を短期的に左右することは誰でもできる。
「価格、品質、数量、その他各般の条件」の総称
当初は、(少なくとも日本では)白石が用いた造語だった。
最近、プライバシー保護の程度や表現の自由の程度なども自然に読み込める抽象概念として定着。
ある需要者に商品役務を供給しようとする供給者の営みを「競争」と呼び、そのような競争が行われる場を「市場」と呼ぶ。
抽象概念であり、物理的なハコモノは必要ない。
日本独禁法2条4項は、そのあたりをうまく表現している。
この法律において「競争」とは、二以上の事業者が……次に掲げる行為をし、又はすることができる状態をいう。
一 同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること
二 同一の供給者から同種又は類似の商品又は役務の供給を受けること
需要者 customer
消費者との異同
商品役務 product/service
特定の事案における市場の範囲を見定める作業
「definition」と言っているが、市場の概念を一般的に「定義」するという意味ではない。上記「市場の概念」のような考察は、ほとんど行われない。
「関連市場」は英和辞典に影響された悪訳(白石私見)
次の2分類がある、というのが世界の教科書の説明
需要者とはどのような人たちか(需要者の画定)
清書すると、需要者の画定が先。
「○○を需要者とし、□□を供給者として、☆☆を供給する市場」
例えば、「地理的範囲」にも2層ある
small but significant and non-transitory increase in price
small but significant and non-transitory decrease in quality
①の後のリアクション
(質問等、教室で口頭で説明するもののみを掲載。以後同じ。)
(①は上記のNTT東日本まで)
垂直型企業結合における検討対象市場
検討対象市場と関連市場の違いについて質問です。講義のなかの垂直的な企業結合の事例では、主に問題となる検討対象市場は川下の市場で、付随的に問題となる関連市場は川上の市場であるとのことでしたが、YとAとの企業結合による取引拒絶等の懸念が直接に現れるのは川上の市場ではないかと思うのですが、なぜこのような区分になるのですか?
メルカリと鹿島アントラーズ
授業内でお話のあった、メルカリによる鹿島アントラーズの経営権取得の件ですが、どういった市場における弊害を念頭に置いて、公取委の審査がなされたのでしょうか?鉄鋼メーカーの水平的な合併の場合なら、建材や車用鋼板など 市場のイメージが湧くのですが、メルカリとサッカーチームの場合、業種もかけ離れている気がして、想像がつきませんでした。
需要者の範囲の画定
需要者画定について、あまり普及していない考えだとおっしゃっていたと思いますが、なぜでしょうか。実際に裁判で似た考えを感じることができ、授業内容も納得できるものでしたので、疑問に感じました。
需要者の画定が先、という論理プロセスがイマイチ理解できずに終わってしまったので、そのあたりの復習を時間的に可能ならばお願いしたい。
東宝やNTTの事例について、もう少し内容を詳しく説明していただきたかったです。あまり私自身経済について詳しくないので、ぜひ宜しくお願いいたします。
反競争性(具体的基準)
(価格等の)競争変数が左右される状態
よくある議論の整理
→ 区別できない。
重要なポイント
能力 ability
意欲 incentive
内発的牽制力
少数株式取得、業務提携、など、当事者が一体化しない場合に必要な議論
共通化割合
他の供給者による牽制力
供給余力(能力)
協調的行動の傾向の有無(意欲)
需要者による牽制力
供給者との交渉力(能力)
値上がり購入分の川下への転嫁能力(意欲)
その他の牽制力
例えば、後出の新幹線飛行機問題
市場シェアと市場集中度指標
A社=40%、B社=30%、C社=20%、D社=10%、の場合
HHI=3000
C社とD社が合併したときのHHI=3400 (400の増加)
決定的な要素ではないが、目安になる。
市場画定と反競争性の総合的理解
市場画定と反競争性成否判断は、一部で重なっている。
市場画定不要論
市場画定不要論への回答
市場画定は、プロセスとしての法的判断(弊害要件成否の判断)の中間段階
大量の企業結合事案を絞り込むため、市場シェアを計算し、HHIを計算して、問題の起こりそうにないものを落とす(早期にクリアランスする)
市場画定段階で、狭く明確に絞っておき、そこで一旦は無視した要素を反競争性成否の判断の段階で考慮する、ということが行われる。
p21, pp23-24, コンクリート壁工法
需要者は誰か、を画定する必要はなお残る。
どこでUPPが起こるかを見ればよいか(資料を集めればよいか)、わからない。
企業結合規制ならよいが、非企業結合 non-merger では課徴金・罰金をかけなければならず、事案の規模を把握する必要がある。 正当化理由
正当化理由の判断基準
目的が正当
手段が正当(必要な範囲内)
反競争性の程度を上回る
正当な目的の諸種
不適格な事業者や商品役務の排除
知的創作や努力のためのインセンティブ確保
普通の特許の場合
物理的・技術的・経済的な困難
効率性向上・競争促進効果
共通リフト券
実現可能性
需要者への還元
公共性
正当化理由としての破綻企業論
因果関係論としての破綻企業論
(②はここまで)
ssnip ssndq
②の後のリアクション
(感想等、全て有難く拝見していますが、ここには質問に当たるもののみコピーします。以後も同じです。)
一点目、内発的牽制力の有無は当事者が一体化しない場合に必要となる議論であるという話でしたが、このようなケースで問題になる場合は、その前の項目にある、単独行動・協調的行動のどちらに該当するのでしょうか(AB一体として捉えて単独行動と見るのかABが一体化していないと見て強調していると考えるのか)。それとも講義でおっしゃっていた厳密に区別できない事例にあたるのでしょうか。
二点目、需要者の牽制力のところが今ひとつ理解できませんでした。能力と供給者への交渉力の有無が関係あるのは理解できましたが、意欲と値上がり購入分の川下への転嫁能力の関係についてがよくわからなかったので次回時間があれば再度説明していただけるとありがたいです。
20年前辺りまで正当化理由はないとされていたのが、明確な理由や例えば社会的な背景事情があったのか、それとも議論がなされていなかっただけなのかということが気になりました。
質問1:一つの主体の不可分一体な行為が複数の弊害発生の型に抵触する場合、それに対する規制・制裁は抵触する複数の側面から加えられるのでしょうか、それとも刑法で言うところの観念的競合などになったりするのでしょうか。
例:GAFAによる市場拡大のための、個人情報と引き換えに無料でサービスを提供する行為は、・略奪廉売の他者排除・消費者への個人情報搾取にあたるのではないか
質問2:届出事例振い落しのために市場画定が用いられるとのことでしたが、いずれ企業結合審査実務においてAIによる省力化が図られた際などには、最終的に実務上も市場画定不要となる可能性もあるのでしょうか。それとも、需要者の確定の必要の観点から、いつまでも残るものなのでしょうか。
因果関係
日本では要件の存在を否定する意見が強かったが、今では事例が増えている。理論体系として明示的に受け入れるものが少ないだけ。
正当化理由概念も、日本では、1997年頃以降。
並行行為
並行的排他的行為
滝澤紗矢子『競争機会をめぐる法構造』
並行的廉売行為vi
並行的企業結合
特殊条件
もともと弊害要件が満たされており、今回の行為がそれを強化するわけでもない
競争を期待できない場合
市場(需要者)が小さすぎる場合
近い将来はいずれにしても弊害要件を満たす状況になる
因果関係論としての破綻企業論
新幹線飛行機問題
検討対象市場のなかにサブマーケットが画定されるか、という形で、昔から議論されている。
米国
以下のとき、サブマーケットを画定
供給者が特定の需要者を他から区別して価格設定できる discriminatory pricing
他の需要者からの横流し arbitrage がない
「新幹線飛行機問題」は、白石が発案した例
JR東海は、「飛行機に乗れず新幹線しか選べない需要者」を他から区別して価格設定できるか。できないなら「新幹線だけの市場」は成立しない、というのが米国流の議論。
白石
それは、「新幹線だけの市場」が成立しないのではなく、「新幹線だけの市場」は成立するがそこで反競争性が発生しない、ということなのではないか。
NTT東日本が、「FTTHサービスしか選択肢としないという需要者」を他の需要者から区別できないことを前提としつつ、
FTTHサービスが、「隣接市場を侵食しつつ急速に拡大している」ことを根拠に、「FTTHサービスしか選択肢としないという需要者」だけを念頭に置いた市場を検討対象市場としても同事件のNTT東日本の行為によって反競争性は発生した旨の解説。
personalised pricing
特定の需要者を他から区別して価格設定をすることが容易となっているのではないか?